成年後見制度への道

成年後見制度という言葉を聞いた事があるでしょうか?厚労省のサイトには『認知症、知的障害、精神障害などの理由でひとりで決める事が心配な方々は、財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続きなど)や身上保護(介護・福祉サービスなどの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認など)などの法律行為をひとりで行うのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であることがよくわからないままに、契約を結んでしまい、悪質商法の被害に遭うおそれもあります。このようなひとりで決めることに不安のある方々を法的に保護し、支援するのが成年後見制度です。』とあります。

2000年に介護保険制度がスタートすると共に始まった制度です。それまであった禁治産制度を改変した形であり、介護保険についても同じ事がいえるのですが、介護を家族の問題から社会の問題として捉える事に変遷させた事が大きな変化といえると思います。1980年代に映画「花いちもんめ」や有吉佐和子著「恍惚の人」などで高齢者の惚け、認知症の問題が社会現象となり、これからの高齢化社会に備えて、国や行政、司法が介入する事になった制度といえるでしょう。
ただ、この制度には様々なメリット、デメリットがあり、行政、司法が絡んで複雑な問題を含んでいます。今回はなぜ介護の問題がその制度に繋がっていくのかを、順を追って説明したいと思います。

両親が高齢になってくると介護の心配が出てきます。これはどんな家庭でも避けては通れない話です。元気で認知症ではなくても、転倒で骨折したり、内科的な入院をしたり、度重なる老人特有の物忘れが出てくるなどで生活レベルが下がってくると、子供達は今後の親の生活について考えなければならなくなります。入院した病院で介護認定を取るよう促される事もあるでしょう。そしてまず、相当数の家族が地域包括センターなど行政に相談をします。
様々な手続きを経て、親に介護認定がされてから、いよいよ介護サービスの利用が始まります。ただ、このサービスを受ける為に様々な契約が必要になります。
親の状態や出せる金額にも寄りますが、要支援でもトイレやお風呂に付ける手すりやシルバーカーなどの利用にも月500円でレンタル契約が必要ですし、要介護で在宅ならケアマネージャー、ヘルパー、デイサービス、訪問看護と様々な契約が必要になってきます。
デイサービスやショートステイの計画を立てる為に月一でケアマネージャーとの打ち合わせもしなければなりませんし、訪問ヘルパーがちゃんと仕事をしているかのチェック、訪問看護に一緒に付き添って医師や看護師と話もしなければなりません。
これらを遂行する為に、家族の中でキーパーソンになる人物、主介護者を決めなければならない訳です。
ここで何も問題がなく、スムーズに決まる家族なら良いのですが、往々にしてそうした家族ばかりではない事があります。
家族の中で厄介な存在、金銭管理にルーズであったり、社会性に乏しく直ぐに感情的になって論理的に話が出来ない、そうした家庭の中に嵐を巻き起こす、ダイナマイト親族、地雷兄弟、姉妹がいると、事はそう簡単に進まなくなります。
中には被介護者である親自身がダイナマイトであったり、その配偶者が地雷であったりすると、尚更、大変な事態を引き起こします。
特に高齢者の中には自宅に他人が入る事を快く思わない方もいます。受けられるサービスを拒否して自分達だけでどうにかしようと悪戦苦闘し、お手上げになり、子供が駆け付けた時にはゴミ屋敷と化すケースや、お金が勿体ないとなるべくそうしたサービスを利用しない(全てが無料ではなく、実費はかかるので)など、手前勝手な介護に走るケース。また、介護は家族でやるのが当然だと子供達を振り回すケースもあります。これは大事な家族の世話を他人任せに出来ないからという大義名分の下に、事あるごとに子供達を呼び出し、必要以上に騒ぎ始める。しかし、今の日本は女性が家で安穏と過ごせる国ではありません。共稼ぎが当たり前であり、若い世代は自分達の生活だけで精一杯で、正直親の介護と言われても実質動ける子供は少ない事が現実です。
そして子供達も一枚岩でないなら、またそれも問題に繋がります。それぞれに配偶者がいればそちらの思惑も反映されますし、一番、厄介なのは主導権は握りたいけれど肝心な実務に対しては無理解であったり、それは他の兄弟任せという無責任な人物がいればそれに反発して、家族内紛争へ繋がっていきます。

ましてや親にいくばくかの資産がある場合や収入がある、債権もあるとなると話は益々、複雑になってきます。根底に相続は均等であるという前提条件があるのですから当然です。
親に収入(賃借物件を持っている)や債権があれば、そのための確定申告や税金の問題もあります。そうした手続きを金銭管理がルーズな兄弟の一任には出来ないでしょうし、それとは逆に資産をひとり占めするのではないかと懸念する家族も出てくるでしょう。
(ケアマネージャーは親を介護するためのプラン作りをするだけなので、家族の問題には介入しません。)

こうした家族内で起こる内紛や意見の行き違いから、行政や然るべき専門家に相談しようと思う家族が出てくるのは自然な流れかもしれません。
次回からはこうした行政機関や弁護士に相談してどうなっていくのか、そしてその後に繋がる問題点について深掘りしていきたいと思います。

※ダイナマイト親族、地雷兄弟、姉妹の話はどこの家族でもある事です。家族といえども人格は別であり、そうした凸凹があって家族とは成り立っているといえるかもしれません。
ただ、日本には恥の文化があり、特に家族内の問題を表に出したくない傾向が強いです。
ウチは家族みんな仲良しだから、こんな問題とは無縁だわと思わずに、考えて貰いたいのです。今年は安穏に過ごせても来年はわからないのが家族です。

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