記録廃棄問題、最高裁が出した経緯などの報告書から見える家庭裁判所の異常さ。

まず、この記事を読んで頂きたい。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230525/amp/k10014078161000.html

26年前に起きた神戸児童連続殺傷事件など、社会的に注目された少年事件や民事裁判の記録が各地の裁判所で廃棄されていた問題で、最高裁判所は25日、廃棄の経緯や保存のあり方についてまとめた報告書を公表しました。「後世に引き継ぐ記録を多数失わせてしまったことを深く反省している」と謝罪し、今後は、国民の財産であることを組織的に共有していくとしています。

重大事件の記録の廃棄が各地で発覚したことを受けて、最高裁判所は有識者委員会を立ち上げ、およそ100件の少年事件や民事裁判について経緯などを調査してきました。報告書の公表にあたって最高裁の小野寺真也総務局長は記者会見で「今回の一連の問題は、最高裁による不適切な対応に起因している。後世に引き継ぐ記録を多数失わせてしまったことを深く反省し、事件に関係する方々を含め、国民の皆様におわび申し上げる」と述べて謝罪しました。

NHK NEWSWEB 記録廃棄問題 最高裁が経緯などの報告書公表「深く反省」より

今後の対応として

  • 歴史的・社会的な意義がある記録が含まれている事を組織的に共有するため規程に「保存する意義」を明記。
  • 特別保存に指定する基準や判断時期の見直し。
  • 専門家の意見を聞くために常設の第三者委員会の設置。

この三つを挙げ、関係者の処分は報告書をふまえて適切に対応としています。

では、その報告書には何が書いてあったのか。

裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書

最高裁判所はこの報告書の中で100件の対象事件について調査しました。そのうち少年事件が59件、民事事件38件、特別保存に指定されていたのに廃棄されていたのが7件です。

まず「記録保存」のルールですが

  • 少年事件→少年が26歳に達するまで。
  • 民事訴訟→確定から5年。

その中で「特別保存」となる永久保存すべき事件は

  • 世相を反映、歴史資料として価値が高い。
  • 社会的に注目を集めた事件
  • 少年非行の調査、研究の重要資料になる。

では、これをふまえて実際に調査された事件を元に、資料がどういった経緯で廃棄されたを個別案件でみてみましょう。

平成9年神戸児童連続殺傷事件

報告書によりますと、当時、廃棄を担当していた管理職の職員は廃棄に先立ち当時の所長を含む複数の管理職に話を持ちかけましたが、所長は自分が特別保存を検討する立場だという認識が無く、明確な判断を示さなかったということです。

このため担当者は自分で判断しなければと考え、実際に廃棄する時には所長には相談などしていませんでした。

担当者は特別保存にあてはまる可能性があると考えましたが、神戸家裁で特別保存したものはそれまでないと聞いていたこと、保存期間満了から2年を過ぎていたこと、少年事件は非公開でほかに記録を使うことはないと思ったこと、記録庫が狭かったことなどを総合的に考慮し、保存の必要はないと判断して廃棄手続きを進めたということです。

しNHK NEWSWEB 記録廃棄問題 最高裁が経緯などの報告書公表「深く反省」より

なんと神戸家庭裁判所職員にとって、この事件は特別保存すべき「社会的に注目を集めた事件」や「少年非行の調査、研究の重要資料になる。」ものという意識はなく、神戸家裁で特別保存したものはそれまでない、少年記録は非公開で他に記録を使う事はないだろうと判断し、廃棄したとあるのです。しかも、当時のこの職員の上司である所長は明確に判断出来なかったと。

この組織の異常さを感じずにはいられません。この事件は当時、かなりメディアで扱われ、14歳の少年が連続殺傷事件を起こしたという前代未聞の事件です。それを知らなかったはずはないでしょう。記録庫が狭かったなら、なぜデジタル化して保存という方法も思いつかなかったのでしょうか?こうした稚拙な仕事ぶりが、家裁のお仕事であるのなら呆れるばかりです。

大分地裁で「特別保存」指定された記録

大分地方裁判所では、永久的に保存する「特別保存」に指定していた民事裁判6件の記録が廃棄されていました。

報告書によりますと、担当の管理職は、定められたとおり記録の表紙に赤色で特別保存と記載していなかったほか、システム上もマニュアルで定められたものと異なる所に情報を入力していたということです。

その結果、システムから出力した目録に保存期間が過ぎた記録としてこれらの6件が記載されてしまい、記録自体も通常の棚に保管されていたため、ほかの職員は特別保存だと気付かず、誤って廃棄されました。適切に事務が行われなかった背景としては「担当管理職に様々な事務が集中し、繁忙がうかがわれたのに、幹部職員は業務量の調整などをしていなかった」としています。

NHK NEWSWEB 記録廃棄問題 最高裁が経緯などの報告書公表「深く反省」より

これは完全にマニュアルがあったものの、職員の単純ミスとチェック体制の甘さが原因です。そしてその言い訳が担当職員に事務が集中し、仕事がおろそかになっていたのに幹部職員が調整しなかったからだと。これは地裁ですが、上司と部下の意思疎通が普通に出来ないのでしょうか?果たしてミスはそれだけなのか?と疑いたくなるレベルです。

平成24年 亀岡 暴走事故 事件の記録

平成24年に京都の亀岡市で起きた暴走事故では、担当の管理職は、この事件の記録が廃棄対象になっていることを認識していましたが、特別保存するのは再審=裁判のやり直しが請求される可能性があるものや、殺人や放火などの重大事件だと考えていたということです。

そして、この事件の罪名が殺人などではなかったことや、少年事件の記録はプライバシーの観点から原則、廃棄と考えていたため、特別保存する考えに至らず、所長などに相談することもなく廃棄手続きを進めたということです。

NHK NEWSWEB 記録廃棄問題 最高裁が経緯などの報告書公表「深く反省」より

これは暴走事件を罪名が単純に殺人じゃなかったという事で所長にも相談せずに、担当職員が自分で判断し、廃棄してしまったという・・・この担当職員の社会常識を疑いたくなります。

平成16年 佐世保 少年事件の記録

平成16年に長崎県佐世保市で起きた少年事件では、佐世保支部の管理職から相談を受けた長崎家庭裁判所の管理職が「地域限定的な事件だ」という印象を受けており、全国的に社会の注目を集めた事件ではないので特別保存の要件には該当しないと考えたということです。

その結果、所長に相談などされることもなく廃棄されていました。

NHK NEWSWEB 記録廃棄問題 最高裁が経緯などの報告書公表「深く反省」より

これも衝撃的な事件でメディアでも大きく取り上げられた事件にも関わらず、地域限定的な事件で全国的に社会の注目を集めた事件ではないと、なんと家庭裁判所の管理職が印象としてあったので特別保存にあたらないと廃棄したとあります。この事件は小学6年の女児が同級生の首を後ろから掻き切って殺害したという事件です、それも校内で。被害女児の首の傷の深さは約10センチで骨が見えるほどの深さでした。被害女児は抵抗したものの、加害女児は何度も切り付け、被害女児が絶命した後も自身が浴びた返り血を拭き、被害者が絶命したかどうか確認をしたという、他に類を見ないほどの残忍な事件でした。それなのに、地域限定的な事件だという印象を持っていたという、この管理職がいる家庭裁判所っていったいどういう場なのでしょうか。

報告書から見えてくる、家庭裁判所、地方裁判所のお仕事ぶりに呆れるばかりですが、特に基本的に非訟案件を扱う家裁がこの状態である事に不安しかありません。こうした事態が常態化した幼稚で稚拙な組織が私たちにとって、一番身近に起こりうる、離婚や親権、成年後見制度について重要な事項を判断しているからです。

少年事件に関しては少年法の壁があり、遺族は資料の閲覧さえ出来ていませんでした。そしてその事件の真相を知るのに一番、大事であった資料は裁判所によって廃棄されてしまった。

こうした事態を繰り返さない為にも、私たち国民はもっと司法に関心を持ち、監視の目を入れていく事が大事だと思います。その為にも裁判は可視化し公開しなければなりません。

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