廃棄された「豊川市主婦殺人事件 」

名古屋家裁本庁(番号14)

【事件概要】

豊川市主婦殺人事件。2000年(平成12年)5月1日に日本の愛知県豊川市で発生した少年による殺人事件。

少年が主婦を40ヶ所も刺して殺したうえに、夫にも重傷を負わせた。その後、前もって竹藪に隠してあった服に着替えて逃走したが、竹藪に自分の鞄を置き忘れる。

【事件の発覚】

豊川市の住宅で、妻が血だらけで倒れているのを帰宅した夫が発見して通報。妻は金槌で殴打されたうえ、包丁で首などを刺され死亡した。その直前に少年が家から飛び出したのを夫が目撃し、格闘したが首などを刺されて軽傷を負う。少年は近くの高校の制服であるブレザーを着ていた。逮捕後の供述によると、その日たまたま家の前を通りかかり、玄関が少し空いていたのと表札から年寄りと思い家の中に侵入し凶行におよぶ。

事件を起こしたあと、最寄り駅まで逃走し公衆トイレで一夜を過ごしたあと、「寒くて疲れた」ため交番に自首した。

【犯人】

事件現場近くの高校に通う当時17歳の3年生。学校では明るく活発、成績優秀と評判のいい生徒だった。1歳半のときに両親が離婚したため、中学教師の父親と、父方の祖父母と4人暮らし。祖父も元教師で、祖母を「おかあさん」と呼んで育った。かねてから人の死に興味があり、不老不死の薬の開発も考えたが断念、代わりに殺人に興味を持つ。成績に偏りがあり、第1志望の高校に入れず、強い挫折感と大学入試への不安を感じていた。事件数日前に、それまで打ち込んでいたテニス部を退部する。

犯人の動機は、「殺人の体験をしてみたかった(人を殺してみたかった)。」「未来のある人は避けたかったので老女を狙った」と供述していたが、学校内ではソフトテニス部に所属し、後輩からの信頼も厚く、しかも極めて成績優秀であると見られていたため、その評判と犯罪行為との乖離が疑問とされた。そのため精神鑑定がなされ、1回目の鑑定では「分裂病質人格障害か分裂気質者」と出されたが、2回目の鑑定では「犯行時はアスペルガー症候群が原因の心神耗弱状態であった」という結果が出され、2回目の鑑定を認定し、2000年12月26日に名古屋家庭裁判所は医療少年院送付の保護処分が決定した。2回目の鑑定医師団には児童精神医学の専門医が鑑定団の一人として加わっていた。

【アスペルガー症候群】

アスペルガー症候群とは先天性の発達障害であり、知能と言語能力に問題のない自閉症の一種である。対人関係の構築に困難があるため、二次的な障害として社会生活に対する不適応がみられることがある。

この事件は、文部省(当時)に広い範囲における高機能自閉症児に対する早期の教育支援が必要であることを認識させ、後に特別支援教育として制度化されることになった。

(Wikipediaより)

資料廃棄調査結果

 廃棄時における管理職は、本件は著名事件であると考えたことから、他の職員に特別保存に付すことについての感触を聞いたが、当該職員からは意見がなかった。当該管理職は、当時2項特別保存の制度の存在は知っていたものの、どのような事件が特別保存の対象になるかについての基準がなかったこともあり、最終的には2項特別保存に付すか否かの検討はせず、所長に諮ることはなく本件記録の廃棄手続を進めた。

★参考文献

藤井誠二『人を殺してみたかった 愛知県豊川市主婦殺人事件』双葉社。 森下香枝『退屈な殺人者』文藝春秋社。

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