廃棄された「大阪地裁所長襲撃事件であり、冤罪事件」

大阪家裁本庁（番号３０）

平成１６年２月に大阪地裁所長が重傷を負った強盗致傷事件

【事件概要】

大阪地裁所長襲撃事件であり、冤罪事件。2004年、大阪地方裁判所所長が襲撃されて現金を強奪された強盗致傷事件。

2004年2月16日の夜、大阪市住吉区の住宅街で、徒歩で帰宅中の大阪地方裁判所所長・鳥越健治が4人組の若者に襲われ、現金6万3千円を強奪された上に骨盤骨折などで全治2ヶ月の重傷を負った事件。

大阪府警察の捜査は難航したが、補導歴や不登校など問題行動のある少年をしらみつぶしに調べた結果、A（当時16歳）・B（当時14歳）・C（当時13歳）の3人を犯行に関与したと断定して強盗致傷容疑でA・Bを逮捕、Cを補導した。

【容疑者の逮捕から保釈、そして時効まで】

6月14日朝から事情聴取は始まり、その日のうちに「西成区の二十代の男ら二人におやじ狩りを指示された」「顔見知りのD・Eから指示され、二人も見張り役などで加わっていた。相手が裁判所の所長と知らなかった」などとあっさり口を割っている（読売新聞より引用）が、この自白が事実であったのであれば以降の報道と矛盾する。

その後Cが「初めはやっていないと言ったけど、言っても言っても聞いてくれなくて、脅されたりして…」と後に語る。刑事2人により3ヶ月間、本来は違法である推定有罪的な取り調べのやり方で長時間の取り調べを受け、「早く自宅へと帰りたい」との一心で顔見知りのD・Eの名前を出し、自分たちが犯行をやったと一旦は自供する（ただし、読売新聞の記事通りであれば6月14日の時点で最初から自供していることとなり、矛盾が生じている）。

警察は少年らの供述からD・Eを逮捕、A・Bを大阪家庭裁判所に、Cを児童自立支援施設に送致した。D・Eの逮捕から4ヵ月後、大阪府警は担当刑事を本部長表彰。

だが、D・Eは警察署でも拘置所でも一貫して無罪を主張する（拘置所では重要人物襲撃による重大事件の被疑者として独居房に置かれた）。

やがてD・Eの弁護団は、犯人の写っている防犯カメラの映像を警察が押収していたが、科学鑑定を行っていなかった事実を突き止める。専門家に分析を依頼した結果、警察がD・Eの片方だと判断した映像内の男性と、本人の身長差が15センチ以上もあることが判明。そして、鳥越に体当たりしたと警察に犯行を自供したCが、犯行時刻に現場から遠く離れた自宅付近でメールのやりとりをしていたことが判明。警察が防犯カメラの分析も、少年の携帯電話のチェックもしておらず、見込み捜査のみで供述の裏付け・アリバイつぶしを行っていなかったことが発覚した。

2005年2月、大阪地裁は強盗致傷の罪に問われているD・Eを全面否認のまま保釈するという異例の決定を行う。

その後も真犯人を特定できず2019年に公訴時効成立となった。

(Wikipediaより)

資料廃棄調査結果

本件事件は、成人の共犯者が刑事事件で無罪となり、その後保護処分が取り消されるなどした事件であり、廃棄当時における担当職員は、今後の事件処理の参考とするため、特別保存に付した方が良いのではないかと考え、他の職員との話題にしたり、本件記録を記録庫から出して執務室のロッカーに置いたりするなどした。

しかし、管理職が特別保存について詳しい検討をすることはなかった（当該職員は、管理職の保存に関する温度感が低いことや全件廃棄が基本という固定観念があることなどから、詳細な検討がされなかったと感じた）。

結局、誰からも所長に対し相談や正式に諮られることはないまま本件記録は廃棄された。

★参考文献

一ノ宮美成『自白調書の闇 大阪地裁所長襲撃事件「冤罪」の全記録』 宝島社 (2009年)